おわりに より釈尊が、家族も王の跡継ぎの地位も、王宮での暮らしも国も捨てて、出家をしたことは有名です。原始仏典『スッタニパータ』を読んでいますと、このような家族との縁を捨てた悲しい経験も、釈尊が、・家族を亡くした人々・生まれながら家族を知らない人たち・地位を失くした人々・自国を失った人々の気持ちを理解するために必要だったことがわかります。釈尊は頂点の暮らしを知りながら、自(みずか)らの意思で糞掃衣(ふんぞうえ)を着る最底辺の出家生活をされたわけです。両極端の生活を経験されたことが、大いなる心の肥やしとなったことでしょう。この経験が、釈尊の視野を広げてコノ世の実相を見させ、本当に大切なものは何か? を教えて、悟りに影響したことを感じます。私たちの人生にも、良い時もあれば、悪い時もあります。この喜怒哀楽の落差は、私たちに大切なことに気づかせるために「起こってくれている」とも言えそうです。*悪いことは、私たちにコノ世への「未練」を断ち切るために起こってくれている。*嬉しい出来事は、私たちにコノ世への「感謝」を教えるために起こってくれる。この交互の繰り返しが、人間には結局、心の平安がもっとも大切であることを教えてくれているようです。釈尊の御言葉には、二十一世紀を生きる私たちの生活にも役立つ知恵があります。非常に具体的で実践的な示唆(しさ)に満ちています。この第二巻を訳していましても、その内容が今の社会常識にも合う、ビジネス書のようであり、道徳の教科書のようでもあり、心理学の本のようでもありました。内容に古さを感じさせないことに、この仏典が真理に沿ったものであることが良くわかります。本当に大切な内容は、時代を経ても不滅なのです。釈尊の御言葉は、現代にも生きている。まさに、これを証明する本だと思います。何回も読んでいただけますと、わかっていただけることでしょう。平成から令和へ向かう時に 伊勢白山道
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